ミクロン単位で磨き、
接着剤なしでガラス同士を接合させる

FROM NOWHEREで最初に登場した商品のひとつ、〈形見箱〉は、ミクロン単位でガラスを研磨することで、接着剤を使わずにガラスのパーツを接合して作られています。これにより、ガラスの塊から直接切り出したような造形がうまれるのです。

柴崎「これはオプティカルコンタクトという手法です。研磨して、分子を不安定にさせて、分子と分子が結びつく力を利用しています。同じ素材同士を、仲間が来たと思ってくっつけていく。接着剤を使わないでガラスとガラスがくっついているんです。

液体検査の時に接着剤の成分が溶け出さないよう、検査容器には接着剤を使わないことが求められていることに対応した技術なんですよ」

━━研磨には、どれくらい時間がかかるものなんですか?

柴崎「〈形見箱〉の場合でいうと、下の容器を仕上げるのに2.5ヶ月かかります。これは5つのガラスのパーツで出来ているんですが、いくつかのパーツを貼って磨いて、また貼って磨いて、というやり方をするので、とにかく時間がかかるんです』

三浦「ガラス製品というと工場でボンボン作られるようなイメージですけど、実際は手作業の率が多いんですね。なので、工芸的な色合いが強いかなと。

そこもFROM NOWHEREというブランドの特色で、新しい手仕事なんじゃないかなと思います。すごく時間と手間がかかっています」

━━接着って簡単にポンというイメージなんですけど、そういうものではないんですね。

柴崎「最終的にはポンなんですけど(笑)、そこまでに洗浄したり拭き上げたりするんです。キュッキュッという音がして、きれいになっていくのがよくわかりますよ」

━━研磨するだけじゃなくて、たくさん工程があるんですね。

柴崎「そうですね。研磨する人間と、拭き上げをする人間と、オプティカルコンタクトする人と。その受け渡しをしたりとか、底を丸くしたりとか。いくつかの工程に分かれています」

三浦拭く技術は身につけるのに10年かかるらしいですよ」

━━それは、驚きですね!じゃあ、こういう難しい接着はこの人じゃないと、みたいなことも出てくるわけですか。

柴崎「もちろんもちろん。それは本当にそうなんです。図面が来た時に、これは誰々じゃないと難しいよねっていうのもありますね。人数も少ないので、やっぱり誰々の仕事っていうのは多いですね」

画像: ミクロン単位で磨き、 接着剤なしでガラス同士を接合させる

FROM NOWHEREの製作は、一部機械を使うものの、多くの工程は手作業で行われます。

人の感覚や経験を駆使して作られるカドミ光学工業の製品は、いわば光学ガラス分野の工芸品と言えるのではないでしょうか。

そして、その精緻な加工技術によって生まれる光学ガラスの魅力に着目し、祈りの道具としてデザインした三浦さん。

三浦「これほどまでに純度が高く、静寂すら感じさせる光学ガラスを見たとき、人の心はどのように動くだろうか、人は何を思うだろうか。これからも人々の意識に作用するプロダクトを作り続けたいと思っています」

写真/大塚日出樹

FROM NOWHEREのオンラインショップ

画像: FROM NOWHEREのオンラインショップ

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