リビングやダイニングのインテリアに馴染むデザイン、コンパクトな設計。フランスベッドがつくるモダンスタイル仏壇「メモリーナ」は、場所を取らず、家具のようにお部屋に馴染むことで好評を博しています。
バリエーションが豊富で、お手入れがしやすいのも嬉しいポイント。
ベッドメーカーの印象が強いフランスベッドが、なぜ仏壇をつくり始めたのか。そのきっかけや込められた思いについて、同社で企画・開発を担当する平戸康弘さんにお話を伺いました。
どこにでも置ける仏壇を、というお客さまの声に応えて
──御社が仏壇を手掛けられたきっかけを教えていただけますか?
フランスベッドには、在宅ケアや介護施設で使用するベッドや福祉用具を提供しているメディカルサービス部門がありまして、あるとき、そこの営業マンが介護施設に入所される方から、ご自宅にある大きな仏壇を施設に持っていけない、フランスベッドで小さくてどこへでも持っていける仏壇をつくってくれないか、というお声をいただいたんですね。
それを弊社代表が耳にしまして、「そういう声があるならやってみよう!」と作ることになったんです。そこから数年の開発期間を経て、2019年2月に発売を開始しました。
──介護施設にも持ち込めるコンパクトな仏壇を、というお客さまの声が始まりだったのですね。
そうですね。施設にお入りになる方はもちろんですし、今は手元供養を選ばれる方も増えてきて、ご実家に仏壇はあるけれども、ご自宅でもちょっとした骨壷や位牌を収めるようなものを必要とされている方も多いんですね。
そのようなご要望の方にも喜んでいただける商品を、と思って企画しました。ですので、弊社の商品には大きなものがないんですよ。本当にすべてコンパクトでどこにでも置いていただけるものを第一に考えています。
一方で、今は、新しい住宅やマンションに住み替えるタイミングで仏壇を買い換えになる方も増えてきています。そのとき、今までのお仏壇に入れていたご本尊やお位牌が入らなかったら、どうするってことも考えていかなきゃいけない。
そういう意味では、多少大きめでなくちゃいけないのかなと。大きすぎて部屋に置けなくなってはどうしようもないし、どれくらいのサイズが最適か、開発時には、とても悩みましたね。
──もともとのコンセプトから、ずれてしまいますものね。難しいですね。
はい。それで、いろいろな仏壇屋さんへ伺ってみたんですが、どこも店頭に置かれているのは非常に小さなものが多くて、老舗の仏壇屋さんでも、モダンで値段が手頃な商品を入り口付近に置かれるということは、やはりそういった需要が多いのかなと思ったんですね。
場所を取らない、という点でも、お手持ちのキャビネットやチェストの上に置かれる方は結構いらっしゃるだろうということで、その大きさに合わせて奥行きは深くても420mm程度。幅は大きいもので520mmと、お持ちの家具に載せていただいて問題のない大きさにつくりました。
──商品を企画される中で、ほかに配慮された点はありますか?
お手入れのしやすさや火事への心配など、そこはどなたも気にされる点ですので、膳引きにガラスをはめたタイプをつくりました。そうすると、ロウが垂れたり、お茶やお水をこぼしたりしても簡単にきれいになりますし、お線香が倒れても焦げる心配もありません。また、引き出せるようにすることで煙がこもらないようにもしました。
インテリアの会社ならではの豊富なデザイン
──デザイン面で見ると、「メモリーナ」はバリエーションが豊富ですね。
インテリアに携わる会社としては、リビングでも寝室のベッドサイドでも、家中どこにでも置けて、お部屋に馴染むものをつくろうと意識しました。昨今は、和室や仏間がないお宅も増えてきていますので、洋間に合うデザインのものも必要とされています。
家具のように種類が豊富にあると、より様々なお部屋に合わせられるかなと思ったんです。
メモリーナでは、重厚な上質感のある「フォーマルクオリティ」、すっきりとスタイリッシュな「ナチュラルモダン」、温かみと柔らかさのある「カジュアルデザイン」の3つのタイプ、14型28種類を展開しています(2020年1月現在)。
実は、弊社はこれまでもベッドのフレームやテーブルなど木工製品を扱っていましたので、同じ工場で材料を共有できるんです。ですから、少量多品種をお求めやすい価格で提供できるのは、家具メーカーである弊社の強みですね。
また、これまでベッドのヘッドボードで人気のある、弊社独自の転写技術、グラフィックアートテクノロジー(GAT)という手法を取り入れたデザインの仏壇もあります。家具で培ってきた技術を生かせるのも良いところだと思っています。
リビングでいつも一緒に過ごす気持ちで
──仏壇もインテリアのひとつとして、イメージされているのですね
仏壇というと、多くの方が人目を避けるところに置くものだと考えられているように感じます。
モダンスタイル仏壇は、どこにでも置けるサイズで、どこにでも馴染むデザインですから、普段使わないお部屋ではなくて、やっぱり寝室やリビングなど、家族が集うところに置いていただきたい。仏壇の扉を開けて、家族といつも一緒にいるんだよという気持ちで置いていただくのが一番だなと思うんです。
九州にある家具専門店さんでメモリーナをお取り扱いいただいているのですが、展示場所を和家具のコーナーからリビングコーナーに変えられたところ、たくさんの方が買ってくださるようになったそうなんです。
お家に置いたときをイメージしやすいディスプレイにされたことで、弊社の考えるこれからの仏壇の在り方を、お客さまにも共感いただけたのかなと感じています。
──次は、どんな商品を考えられていますか?
例えば、ガラス張りのキャビネットでどこから見ても中が見える仏壇や、上段は仏壇で下段はワインセラーのような収納機能を持つとか、そういうものがあってもいいんじゃないかと思うんですよね。お家での置き場所が決まっていれば、多様な用途で活用できるようなスタイルもこれから積極的に提案していきたいです。
──インテリアの会社ならではの自由な発想ですね。今後、リビングに自然に置ける仏壇がますます増えそうです