櫂 [KAI]とは
地球に生まれて地球に還る、「心の具」。
大切な人の遺品をほんの少し、木製の器に納め、身近に持つ。
ここには宗教はなく、飾りも格式も無い。
ただ一緒に散歩するように携え、新しいストーリーを生み出していくもの。いつでも、どこでも、直接的に故人と心と心を繋げることができるのだ。
櫂の本来の意味は、「目的地に向けて船を操る木の道具」のこと。
生活空間にあって、自分にとっては大事だけれど、他人にとっては関係のない、そんなもの。
一緒に還ろう。
いつか死ぬときは、一緒に火葬してほしい。自分のことを知らない人々の中で、残り続けるよりも身近な人だけで側に居られたら、それでいいではないか。
金属、ガラス、陶器の素材で出来たものは、「永遠」としてずっと残り続けることに意味があるが、「櫂」はそうじゃ無い。
最後は生まれた地球に還る、それに尽きる。
櫂で「共話」する
櫂を通して、会話や対話などの情報のやりとりではなく、「あのね...」から始まるようなやりとりができる。まるで、故人との時間を共有していくようなやりとりだ。
意見交換ではなく、一つの空気を二人で作っていく感覚。
櫂と二人で話しているように自分は感じるけれど、はたから見たら独り言。
ポータブルの夢
いつでも、どこへでも、
たまに散歩する、庭でお茶する、旅する。
ときには手のひらに包んでみる。
ときには鞄に入れて旅に出かける。
どんな雑木でも
人は、こんな木じゃだめだとか言うけれど、作って欲しいと送られて来る木は、雑木ばかり。そんな木で作ってやると、同じのはないわけだから面白い。
名木ではないが、ひとつひとつ木目が違うし、生えていた場所も違う。
庭の木、母が好きだった木。「櫂」を見ると、その時の画を思い浮かべられる。そして、何にもしないでもこんなにも綺麗なんだ。
素材がはぐくむ物語
提供された木から櫂の器を作る。ひとつにつき12cmくらい。木の皮をむいて、ととのえ、素材感のままに磨きあげる。
ひとつひとつが、ひとつひとつの顔を持っている。
同じ顔は無い。
庭の木、ゆかりの森の木。暮らしになじむ思い出。
遺骨、遺髪、思い出の場所の土、思い出の品を収め、特製の閂(せん)で閉じ、中には木製のシリンダー。シリンダーは、2つまで。小さなメモも入れられる。
私だけの櫂
思い出が違うように素材も形も唯一無二。
宝物みたいな使い方じゃなくてもいい。仮に落としてて傷がついてしまっても、ある種の「思い出」としてそのまま受け入れていい。
何十年とそばで持っていて、変色することもあるかもしれない。それもよし。汚くなったから捨ててしまう、というものでもない。
「私だけのもの」であることが大切で、他の人にとっては何の価値もなくて良い。その人にとっての物語と価値があれば十分だ。
私は、終生、大切に持っていたい。
作家
古渡 章(こわたり あきら)
1945年中国大同省生まれ、1967年多摩美術大学インテリアデザイン学科卒業。
木や金属を使った造形物、家具、建築デザインを主に手がける。作品は目黒美術館や北海道立旭川美術館などに収蔵されている。
「櫂」の入手方法
実店舗での取扱
実際に手にとってから決めたい、という方に。4階のポップカルチャーフロアの中に、櫂の各シリーズが揃っています。(※ビームスでは、櫂の通信販売のお取り扱いはございません)
ビームス ジャパン 新宿 (トーキョー カルチャートby ビームス)
〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目32−6 4F
03-5368-7300
通信販売
既に出来上がっている商品の中から、お好きなものを選ぶことができます。
オーダー制作
ご自宅の庭の木、あるいは故人に縁の木で制作をご希望の場合は、件名に「櫂オーダー希望」、本文にお名前・お電話番号をご記入の上、下記連絡先へお問い合わせください。
オーダーアドレス:kowatt@icloud.com