画像: 祈りの道具は、あなたらしく、自由な発想で/株式会社まなか

自分で組み合わせて偲びの空間を作ったり、祈りの道具屋まなかの仏具は、自由な発想で、あなたらしく偲ぶことができることを提案しています。

暮らしの中にすんなりと馴染むよう、デザインやサイズの他、触り心地や故人のことを前向きに思い出せるような徹底したこだわりや思いについて、仏壇事業を担当する玉越健一さんにお話を伺いました。

「どう供養したらいいのかわからない」
という声に応えていきたい

──御社が石材事業からスタートして、葬祭業、仏壇と事業を拡大されたのには、どういった思いがあったからでしょうか?

玉越 もともとは石材の販売からスタートして、その次にご葬儀、仏壇と広げていきました。仏壇事業に関してお話ししますと、以前は自社のオリジナル商品を作っていたわけではなく、他社さんの製品を販売する販売店の一つであったんですが、そこでお客様のニーズを聞いているうちに、今のままの商品だとお客様が本当に欲しがっているものがご提供できないんじゃないか、という思いに至ったのです。それであれば、今のお客様の求めているものを作って届けようというところから、仏壇事業はスタートしました。

──お客様のニーズというのは、具体的にはどういったものだったのでしょうか?

玉越 今、ご供養に対しての価値観や作法自体が大きく変わっていく中で、「どう供養したらいいのかわからない」という方が非常に増えているのではないか?と思うところがありました。そういった方たちに今の暮らしに寄り添いながら、しっかりと大切な人を供養していく環境を提供することで、供養という習慣や文化をちゃんと次世代に残していきたいなと思ったんです。

お墓だけ、ご葬儀だけ、仏壇だけでは、そういった場を提供できない。習慣を次世代につなげていくために我々ができることを考えた結果、現在の3つの事業を展開することになりました。我々の企業理念は“偲ぶことの真ん中と向き合う”こと。葬儀の仕方がわからない、供養の仕方がわからないといった方たちに、きめ細かいサービスがご提供できるようにと、常に考えています。

画像1: 「どう供養したらいいのかわからない」 という声に応えていきたい

──ご供養に対しての価値観や作法が変化している、ということですが、どのように変化してきたと玉越さんは感じていらっしゃいますか?

玉越 仏壇に関して申し上げますと、仏壇を引き継ぐことは、“家系を引き継ぐ”とか“家督を引き継ぐ”こととニアリーイコールなところがあったと思うんです。そういう意識が徐々に薄れ始めているのかなと思っていまして、例えば実家を出て東京で進学・就職をして、そのまま東京で新しい家庭を作った場合、実家に残してきた仏壇を引き継ぐことはなかなか難しかったりしますよね。

また、住居環境も変化していて、仏間を作ることも少なくなり、リビングに仏壇を置くことになったり。あと、宗教に対する意識もかなり変化しています。いざとなった時に“うちってどこの宗派だっけ?”となることも少なくない。しきたりがよくわからないからこそどうしたらいいかわからない、という方もいれば、しきたりと関係なくやろうと思った時に何をどうしたらいいのかわからない、という方もすごく増えていると感じました。

画像2: 「どう供養したらいいのかわからない」 という声に応えていきたい

──そういったところから、オリジナル商品の開発へと展開していったのでしょうか?

玉越 そうですね。もう一つ、オリジナル商品を作ろうと思った大きなきっかけは、東日本大震災です。当時、東北から東京の方に避難された方がいらっしゃって、「大切な人をもっと感じられるお位牌や仏壇が欲しい」というお話を結構いただいたんです。持ち歩いて一緒に出掛けたい、というニーズも結構あったんですね。

一つ印象的なエピソードをお話ししますと、ある方が亡くなられた方とよく一緒に行っていたレストランに、もう一度連れて行ってあげたいと思い、お位牌を持って行かれたそうなんです。お食事の時にテーブルに置いていたところ、レストラン側から断られてしまって、すごく悲しい思いをされた、というお話があって。それならば、一緒に旅行やお食事に連れて行けるようなもので、なおかつその方を感じられるようなお位牌を作ろうと思ったことが、弊社の仏具メーカーとしての原点なんです。

五感を通してその方を感じてもらえるように

──“その方を感じられるようなお位牌”というのは、具体的にどういったものでしょうか?

玉越 お位牌は、大切な方が亡くなられた時に探されると思うんですが、弊社では現在、“美しい・かっこいい”“可愛い・優しい”“尊敬できる”“親しみやすい”といった個性に寄り沿う6種類のお位牌をご用意しています。その中から、うちのお母さんはこういう人だったな、お父さんはこういう人だったな、と、その方らしいお位牌を見つけていただけたらと思います。

画像: 五感を通してその方を感じてもらえるように

──例えば素材や形、色合いなど様々なお位牌がございますが、こだわりのポイントを聞かせてください。

玉越 素材はガラスや天然石、木と金属を組み合わせたものなどもございます。フォルムや触った時の感触などにしても、五感を通してその方を感じてもらえるようにと、心掛けて製作しています。

あともう一つは、親しみやすさも大事なんですが、親しみやすすぎてもダメなんです。やはり聖域になるような、神聖さは必ずどの商品にも留めるように意識して作っています。 

──その後、最初に作られたお仏壇が“偲ぶ”シリーズの“偲壇”と“偲庵”だったそうですが、初めてお仏壇を開発するにあたって大切にされたことはどのようなことですか?

玉越 一番大切にした思いは、“新しいスタンダードになるものを作りたい”でした。これまでの仏壇とは違う、新たな定番、クラシックになるようなものを作りたいというところから、プロテクト・デザイナーの鈴木啓太さんにデザインをお願いしました。

一見するとシンプルなんですが、中が三段の仕様になっていて、須弥壇といういわゆる昔ながらの仏壇の段があったり引き出しがあったりと、クラシカルな部分にも寄り添いながら、扉を廃して簾にするという新しいチャレンジも取り入れています。観音開きの扉は、開いていると両側にスペースをとってしまうんですよね。

それでもっと小スペースでコンパクトなものをと考えた時に、扉をとることにしたんです。それと、扉は締め切ってしまうと、中と外を断絶したような感じがするんですが、簾だと空気や光が行き交う。そういう優しさみたいなものを求めたところもあります。

画像: 偲壇(墨)/古来より大切なものを収めるための箱というカタチにこだわったモダン仏壇。

偲壇(墨)/古来より大切なものを収めるための箱というカタチにこだわったモダン仏壇。

──確かに扉がないというのはかなり画期的だと思いました。こういったモダンなお仏壇に対して、お客様の反応はいかがでしたか?

玉越 正直に言うと、いいとおっしゃってくださるお客様もいらっしゃったんですが、初めの頃はやはりちょっと苦労しましたね。認知していただくという意味でもそうですし、価格面でもなかなか大変でしたが、徐々に浸透していったという感じでしょうか。

最近は九州から北海道まで、わざわざショールームに足を運んでくださる方も増えました。そういったお客様に支えられて、少しずつ自信をつけていったところはありますね。

──お客様からご支持をいただいているところは、どんなところですか?

玉越 やはりデザイン、その次がサイズ感、コンパクトさというところだと思います。リビングに置いてあっても景観を邪魔しないところがご評価いただいているのかなと思いますね。今の家具に合うかどうかという点は、すごく重要だなと思っているんです。

例えば“偲壇”は竹の白と炭の黒の2種類あるんですが、やはり竹の方が売れるんです。現代のリビングの風景って、モノトーンは少ないと思うんですね。フローリングであったり、テーブルであったり、木目を基調としたお部屋が多いと思うんです。だから、竹の方が木の風合いのインテリアに馴染みやすいんだと思います。それと、女性のお客様が多いので、優しい色、明るい色が好まれているのかもしれません。

画像: 偲壇(竹)/日本古来より生命力の象徴である竹を使用。柔らかな木目が美しい。

偲壇(竹)/日本古来より生命力の象徴である竹を使用。柔らかな木目が美しい。

家具を選ぶようにワクワク感をもって
仏壇を選んでもらえたら

──オリジナル商品を製作する過程において、こだわっているところはどういう点ですか?

玉越 自社工場がないので、基本的には全面的に協力工場にお願いしている形です。まずコンセプトを作ってそれに合わせたデザインが出来上がって、それから一緒に作っていただく会社さんを探すことが多いんです。毎回同じ会社さんに頼めば楽なこともあるかもしれませんが、うちは毎回新しい会社さんを探すようにしているんです。

新しい会社さんと作ることで、新しい技術が取り入れられますし。表現した商品のデザインを技術的に表現していただけるところを探す努力を常にしています。なので、仏壇を作っている会社さんにお願いしたことが今までに一度もないんですよ。語弊があるかもしれませんが、どちらかというと家具を作っているという感覚があるので、家具職人さんや木工職人さん、そういった方達にお願いしています。

画像: DECO(デコ)/4つのパーツを自由に組み合わせて自分だけの偲びの空間を作ることができる

DECO(デコ)/4つのパーツを自由に組み合わせて自分だけの偲びの空間を作ることができる

──確かにどのお仏壇も家具のような佇まいをされていますね。

玉越 家具ってそれぞれ役割があるじゃないですか。テーブルだったら食事をするところ、椅子は座るところ。そんなふうにお仏壇という家具は、お位牌などの手を合わせるものを収めるところ、という役割があると思っていて。お客様にも家具を選ぶような気持ちでお仏壇を選んでいただきたいなと思っているんです。

例えばソファを買う時も、お気に入りのものを探しますよね。そうやって気に入って10年20年使ったら、買い換えることもある。お仏壇もそれでいいんじゃないかなと思うんですよ。家具を選ぶように、楽しみやワクワク感をもってポジティブな感覚で選んでもらえたらいいなと思っています。

──お客様には実際にどのようなご提案をされていますか?

玉越 私共のところでは、まずお客様に仏壇の中心になるものを最初に決めていただいています。ほとんどの方がお位牌にされるのですが、それがお位牌じゃなくてもいいと思っているんです。例えば亡くなったお父様が使われていた腕時計が一番お父様を感じられるものだということであれば、その時計を中心に考えていくんです。

次にお仏壇を選んで、お仏具を選ぶ。お客様がどういう供養をしたいのか、何に手を合わせたいのか。それを私たちは“象徴”と呼んでいるのですが、その象徴を収めるために必要な道具を揃えていきましょう、とお話しています。 

──通販で商品を購入したいとお考えのお客様に対して、どういうポイントに注目して選ぶとよいでしょうか?

玉越 やはり何に手を合わせたいのか、ということがすごく大事だと思います。まずはお位牌からかなと。そして、一番現実的なのはサイズ感です。どのスペースに置くのかをお決めになった状態でサイズを測っていただいて、スペースに合ったものを選んでいただけたら。アドバイスとしては、お仏壇の手前にお鈴とか香炉を置くんです。奥行きプラスαのスペースを確保していただけたらと思います。あとはやはり部屋の雰囲気に合うかどうか、というところでしょうか。

まなかのECサイトでは、ショールームに来られない方のために、商品を選んでいただいたら、こちらでいくつかコーディネートを作ってそのお写真をお送りするというサービスを行なっています。それによってお部屋に置くイメージができるようで、ご好評をいただいております。 

──今後御社で企画されているものや、展望はございますか?

玉越 現在、新たに仏壇を2商品リリースする予定があります。新しいものは奥行きが小さく、扉がついているタイプのものになります。やはりサイズ感とデザインというところにはこだわったものを、今後もしっかりと作っていきたいなと思っています。

さらに先のお話をすると、未来のお客様を創造することをしていかないといけないかなと考えています。いわゆるお仏壇やお仏具って、必要になった時にしか買わないものじゃないですか。それも四十九日の法要までに買わなきゃいけないとなると、お客様との接点も短くなってしまう。なので、いわゆる雑貨のような感覚でいつでも購入していただけるようなものを作っていかないといけないのではないかと思っています。

亡くなった方に手を合わせることだけでなく、例えば心を落ち着かせるために祈る、平和を祈る、遠くに離れて暮らしている人のことを祈る、そういった大きな意味での“祈り”を生活の中に取り込むことによって、暮らしがより豊かになるのではないかと考えています。そういったものを感じることができるような雑貨を作っていくことで、供養としてだけでなく、“祈り”を人々の生活の中に届けていけたらいいなと思っています。

写真/大塚日出樹

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